金属積層造形

金属粉末を用いた積層造形(金属3Dプリンティング)に対する分析調査

原料粉末メーカーを親会社に持つ大同分析リサーチは、金属粉末の品質調査から、積層造形の条件設定、検査・分析までを得意としています。


金属粉末を用いた積層造形に影響を及ぼすパラメーターとしては、造形装置・造形条件はもちろんですが、粉末特性も重要であり品質の良い造形品を作るには両者を適合させる必要があります。
粉末特性の中でも、特に造形装置として広く普及しているパウダーベッド方式では高い充填性と流動性が求められ、一般的には粒度分布の幅が広く円形度の高い粉末は充填性が良く、流動性には同じく円形度の高い粉末が良いとされています。
このように金属積層造形に使用する原料粉の評価を行うことは造形品の品質にとって非常に重要となります。
大同分析リサーチは造形品に対する評価に加えて、原料粉末メーカーの子会社である強みを生かして粉末から造形品までトータルな視点から調査を行います。

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金属積層造形の品質影響項目

以下に造形品質に関わる特性要因図を表す通り、粉末特性の積層造形の難易度から金属造形装置とその造形条件、造形された形状、機械特性、結晶構造等金属造形物の品質が決まってきます。
その要因のどこに課題が残るのかは、ひとつひとつそれらの条件を確認し分析していく必要があります。
 
金属積層造形の品質影響項目

金属積層造形の課題解決の取組み

完成した金属積層造形品から見える課題にどのようにアプローチしていくか、造形の条件だけではなく材料やそのプロセスの分解も必要になっていきます。
大同分析リサーチは以下に記載した内容の通り、造形品に対する評価はもちろんのこと、原料粉末の製造メーカーの子会社である強みを生かして、粉末から造形品までトータルな視点から問題を解決します。

評価対象 項目 分析目的 分析方法
粉末 嵩密度、タップ密度 紛体に含まれる気体の程度 容器法・漏斗法、タップ密度法
粒度分布 充填性、流動性の重要因子 レーザー回折式、粒子画像計測
粒子形状 同上 SEM、粒子画像計測
表面性状 表面酸化状況・表面修飾有無 SEM、オージェ電子分光、ラマン分光法
動的流動性 紛体の各種動的流動情報取得 粉体流動性分析
化学成分 材質の確認、粉体の酸素量 ICP発光、赤外線吸収
融点 造形条件への反映 DSC
熱物性 造形条件への反映、シミュレーション用物性値 熱伝導率
造形物 機械特性 造形品の基本特性把握 引張試験、シャルピー試験、疲労試験
残留応力 変形、曲がり、割れに影響する因子 X線回折
内部欠陥 造形条件への反映 X線CT、X線透過試験
結晶構造 造形品の基本特性に影響する因子 X線回折
結晶粒度、配向性 同上 ミクロ組織、EBSD
熱物性 実部品を想定した特性把握 熱伝導率、弾性率、膨張率測定
熱疲労特性 同上 流動層熱疲労試験、ヒートチェック試験
化学成分 材質の確認、粉体の酸素量 ICP発光、赤外線吸収

検証実験

【粉末特性の積層造形品質への影響】

原料粉の粉末特性がいかに造形品質に影響を及ぼすかを示す検証実験を行いました。
平均粒径が大きく円形度の低い粉末と平均粒径が小さく円形度が高い2種類のマルエージング鋼の粉末を用いた積層造形品から引張試験片を作製し、引張試験を行ったところ、平均粒径が大きく円形度が低い粉末で作製した引張試験片の引張強度、伸び、絞りは平均粒径が小さく、円形度が高い粉末で作製した引張試験片に比べて低い値を示しました。
破面観察を行ったところ、平均粒径が大きく円形度が低い粉末で作製した引張試験片の破面には巣が多数認められました。
 

 
原料粉形状 (平均粒径近傍)

左側が正常品の原料粉形状、右側が破損品の原料粉形状 (いずれも平均粒径近傍)

 
リンク先にはさらに、詳しい情報を掲載しております。粉末造形の特性とその結果については、以下「検証実験の詳細へ」より詳しい内容をご覧ください。
 

分析事例

粉末及び積層造形品に対して分析を行った事例のご紹介です。(事例:1~5)

 
 

マルエージング鋼粉末の構造解析を行った。
XRDの結果から残留オーステナイトが存在していることが明らかとなり、EBSDでその分布状態がわかる。

 
 

ミクロ組織観察により粒子同士の組織的な融合状態が確認できる

 
 

細束X線回折装置を用いて局所的な残留オーステナイトの評価を実施した。(X線照射面積φ1)
残留オーステナイトの分布は歪の原因になることが考えられるので、確認が重要である。

 
 

棒状造形品の残留応力をX線回折装置を用い評価を実施した。
積層の開始点及び終点付近っでは圧縮応力が働き、積層の中間地点では引張応力が働いていることが判明した。

 
 

・レーザーフラッシュ法を用いてSKD61粉末の熱伝導率測定を行った。 ・粉体の熱伝導率は測定雰囲気に影響を受けることや、
 バルク体の値とは大きく異なることが示された。

粉末の結晶構造評価

 

 
マルエージング鋼粉末の構造解析を行った。
XRDの結果から残留オーステナイトが存在していることが明らかとなり、EBSDでその分布状態がわかる。

粉末のミクロ組織観察

 

 
ミクロ組織観察により粒子同士の組織的な融合状態が確認できる。

金属造形物の残留応用力評価例

 

 
棒状造形品の残留応力をX線回折装置を用い評価を実施した。
積層の開始点及び終点付近っでは圧縮応力が働き、積層の中間地点では引張応力が働いていることが判明した。

金属積層造形物の残留オーステナイト測定

 

 
細束X線回折装置を用いて局所的な残留オーステナイトの評価を実施した。(X線照射面積φ1)
残留オーステナイトの分布は歪の原因になることが考えられるので、確認が重要である。

粉体の熱伝導率測定

 

 
・レーザーフラッシュ法を用いてSKD61粉末の熱伝導率測定を行った。 ・粉体の熱伝導率は測定雰囲気に影響を受けることや、
 バルク体の値とは大きく異なることが示された。